アトピー性体質のある人に生ずるかゆみの強い、慢性に繰り返す湿疹(しっしん)である。
喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんま疹(しん)のできやすい遺伝的アレルギー性体質(アトピー性体質)をもっている人は、生まれつき、いろいろな物質に過敏で、草木の花粉やダニ、家の中のほこり、カビの胞子などに触れたり吸い込んだり、そのほか生活環境のいろいろなものが刺激となってこの皮膚炎をおこす。年齢によって症状が多少変わるのも特徴で、ここでは乳児型、小児型をご紹介いたします。
(1)乳児アトピー性皮膚炎 生後2か月前後を経過するころからみられる。最初は、頬(ほお)に赤い斑点(はんてん)やぼつぼつ(丘疹)ができ、ついで小さい水ぶくれ(水疱(すいほう))が現れ、やがて頬から前額、下顎(かがく)が冒され、進行すると頭部にまで及び、広範囲にわたって赤くなり、滲出(しんしゅつ)液がじくじくとしみ出し、これが乾燥してかさぶた(痂皮(かひ))をつくる。かいたり、こすったりするといっそう赤みを増し、液の滲出もひどくなって悪化する。
(2)小児(幼児)アトピー性皮膚炎 満1歳過ぎのころからみられるが、もっとも多いのは4~7歳である。できやすい部位は肘(ひじ)や膝(ひざ)のくぼみで、皮膚が厚くなるのが特徴で、乾燥してかさかさしている。表面の皮膚の線(皮溝)が深くなってはっきりみえ、触れると厚ぼったくざらざらしている。かゆみが非常に強くて患部をかきむしるように強くかき、ひっかき傷ができて血がにじみ出るようになり、症状がどんどん悪くなる。
小児乾燥型湿疹は小児アトピー性皮膚炎の比較的軽症な場合の特徴をとらえた診断名である。満1歳以上7歳くらいまでの間におこる。胴体、肩、腕、大腿(だいたい)(ふともも)などにできやすい。患部の皮膚は乾燥してざらざらしている。よく見るとアワ粒くらいの大きさの皮膚と同色の小さいぼつぼつ(丘疹(きゅうしん))がたくさん固まってできていたり、広範囲にわたってできていたりする。表面が白い粉を振りまいたようにみえるところもある。赤みはあまり強くない。冬季にひどくなる性質があり、夏季の汗をかくころは、かゆみもなく、よくなっていることが多い。
この皮膚病は季節の変わり目にとくに再燃してかゆくなる。外用治療が重要で、副腎皮質ホルモン剤を含んだ軟膏(なんこう)・クリームの塗布が原則である。滲出液が出る場合は患部に細菌が増殖して治りにくくなっているので、抗生物質を必要とすることもある。副腎皮質ホルモン含有外用剤の長期連用による副作用を防止するため、改善時には保湿・保護を目的とする外用剤に変更し、あるいは細胞性免疫抑制剤含有軟膏に変更し、これらを症状にあわせて適切に使い分けることが重要である。治療の際に注意するべきことは、かゆみを止めて患者に患部をかかせないようにすることで、かくとかゆみがいっそう強くなり、皮膚の症状も悪化する(かゆみと掻破(そうは)の悪循環)。かゆみを止めるには、全身療法として抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を内服させる。